妻・嫁・女房・奥さん・家内・かみさん etc.
自分の配偶者のことを他人に話す時、どんな呼び方を使っていますか?
自分とは異なる呼び方をしている人を目の当たりにすると、自分の呼び方が適切なのか疑問に感じますし、「こう呼ぶべきだ!」と主張する人がいたら不安に駆られてしまいますよね。
変な呼び方をしているがために夫婦の関係性や個人の印象を勝手に決められてしまうのも気持ちが悪いです。今回は、そういった心のモヤモヤが解消する記事です。
正しい呼び方を知ったうえで自分流のスタイルを貫きましょう。
記事後半では日本語の意味や語源から間違った呼び方が叩かれる風潮のなかで、言及されない呼び方の裏側にスポットを当てたいと思います。
正しい呼び方は「妻」
自分の配偶者のことを他人に話す時の正しい呼び方は「妻」です。
婚姻届でも記入欄には「夫になる人」「妻になる人」という指定がありますし、
住民票の世帯主との続柄でも女性の配偶者を「妻」と表します。
呼び方に迷ったらとりあえず「妻」を使えば間違いないです。
呼び方の種類
正しさを論じれば「妻」でファイナルアンサーですが、適切さ、つまりその場にふさわしく、ぴったりと目的に合っているかを考慮すると結論が変わってきます。
呼び方が多様化した現代では、正しさよりも適切さに焦点をあてたほうがスッキリできます。
まずは世間でどのような呼び方が使われているのか知っておきましょう。
下表はブライダル総研が2011年に調査した「男性が他人に話すときの配偶者の呼び方(既婚者/単一回答)」のデータ
この調査データでは「嫁・嫁さん」が多くの支持を得ています。正しい呼び方の「妻」が1位じゃないのが面白いですね。
それぞれの呼び方について日本語の意味や語源などを絡めて紹介します。
1位:嫁、嫁さん
よめ [嫁]
(1) むすこの妻
(2) むすこの妻として家の籍に入った女性
▼~をもらう *昔の家制度に基づく言い方
(3) 結婚相手の女性
▼~さがし ◇ (対)婿引用:「嫁」 『三省堂ウェブディクショナリー』より。
息子の配偶者なので両親視点の呼び方になります。本来の語義からすると夫が自分の配偶者に対して「嫁」を使うのは誤用です。
しかし、近年では「嫁」という呼び方が市民権を得ています。あなたの周囲でも「嫁」と呼んでいる旦那さんの割合が多くないでしょうか?
この変化には日本のテレビ事情が大きく影響していて、今のテレビはどのチャンネルに回しても関西出身の芸人さんが出演していますよね。
彼らは配偶者のことを「嫁」と呼ぶ土地柄なので全国放送でバンバン使います。一般的には誤用であるにも関わらず「嫁」が普段使いとして馴染み、定着していったというのが大方の見解です。
わざわざ「嫁」の意味を辞書で引いて調べる人は少数派なので、大多数は誤用に気付かず使ってしまいます。
2位:名前
名前で呼ぶのは、話をする相手が自分の配偶者を知っていないと成立しません。
「名前」がランキング上位にくるということは、身近な知り合いにしか配偶者の話題を出さない、もしくは配偶者が同行することが多い旦那さんが多いんじゃないかと推測できます。
3位:家内
かない [家内]
(1) 家の中.家庭
(2) 自分の妻引用:「家内」 『三省堂ウェブディクショナリー』より。
家のことは妻に仕切ってもらっているので敬意を込めて呼ぶ夫もいれば、家族を経済的に扶養している夫が一番偉いから一家に属する妻を低い位置におく前時代的な考え方で呼ぶ人もいます。
後者の考え方を持っている旦那さんはブライダル総研の調査データをみると絶滅寸前です。「家内」は60代では1位なのに対して20-30代ではほぼランク圏外。
4位:奥さん
おくさま [奥様]
他人の妻の敬称.
引用:「奥様」 『三省堂ウェブディクショナリー』より。
「奥さん」は奥様より敬意の軽い呼び方です。
大奥という言葉もあるように、もとは公家や大名などの妻の敬称として使われる呼び方でした。本来の語義からすると夫が自分の配偶者に対して「奥さん」を使うのは誤用です。
正しい使い方は他人の妻を尊称する場合ですね。
5位:妻
つま [妻]
夫婦の女の方. (対)夫
引用:「妻」 『三省堂ウェブディクショナリー』より。
前述の通り「妻」はお国も認める正しい呼び方です。
6位:かみさん
かみさん [上さん]
妻. *くだけた言い方.
引用:「かみさん」 『三省堂ウェブディクショナリー』より。
「かみさん」のかみは目上の人という意味です。語源には将軍や天皇に対して使った上様、山の神様などの諸説があります。
「かみ」で敬い、「さん」で親しみを込める。妻に対して敬いと親しみを込めた呼び方なんですね。
7位:女房
にょうぼう [女房]
〔俗〕 妻.にょうぼ. *昔は宮中の女官や貴族の侍女をさした. (類)家内
引用:「女房」 『三省堂ウェブディクショナリー』より。
「女房」から派生した言葉に恋女房や世話女房、女房役(野球のキャッチャー)などがありますが、「女房」の語源は朝廷に仕える女官(厳密には個室を与えられた女官。房は部屋が語根)や貴族の家に仕える侍女です。
ぼくが調べた限りではネット上で「夫が妻を見下してる」という声が一番多かった呼び方でしたね。
「家内」と同じ傾向で年齢層が高い旦那さんには人気ですが、20-30代になるとランク圏外になります。
8位:うちの
「家内」の俗っぽい言い方です。
妻に対して親しみを感じさせる呼び方ですが「うちのが~」と話された相手は一瞬何のことかと戸惑うかもしれませんね。
9位:ニックネーム
名前で呼ぶのと同じで身近な知り合い限定の呼び方です。
初対面の人に「ラブリーちゃんがさぁ」なんて言ってしまう旦那さんはクレイジーです。
10位:お母さん・ママ・おかあちゃん
子ども相手またはパパ友、ママ友など子ども関連のコミュニティで使われる呼び方です。
家族以外にほとんど関心がないゴリゴリのマイホームパパなのだろうか?
状況別に呼び方を使い分ける
ここまで呼び方の種類をランキング形式で紹介してきましたが、どれか一つを選んで他はダメってわけではありません。状況に応じて呼び方を変えるのが普通です。
上司の前では「妻」と呼ぶし、男友達の前では「嫁」、夫婦共通の友人の前では名前。子どもの前では「ママ」、呼び方に迷ったら「妻」です。
状況別に呼び方を使い分けるメリットは相手に違和感を感じさせず円滑なコミュニケーションがとれることです。
呼び方が多様化したのには理由があります。一つの呼び方に固執せず臨機応変に有効活用しましょう。
妻に好まれる呼び方
勿論、呼ばれる側(あなたの配偶者)にも配慮する必要があります。
夫婦とはいえ所詮は他人です。それぞれ価値観は異なるのだから好感を与える呼び方を選んで余計な衝突を回避しましょう。
「夫婦で相談する」は何事においても基本です。
下表はアンケートサイト「みんなの声」が2015年に調査した「家庭外で「妻」について話す際に好感が持てる呼び方はどれですか?」のデータ。
「奥さん」が1位。旦那さんがよく使う「嫁」「名前」はランクダウンしてます。
パートナーとして対等に見られたい、もしくは敬意を払ってもらいたい気持ちがあるのでしょう。
呼ぶ側と呼ばれる側の視点の違いですね。これは夫の呼び方でも同じ傾向が見られるかと思います。
言及されない呼び方の裏側
ブライダル総研の調査データでは3割強の旦那さんが使っている「嫁」ですが、露出が多くなったせいかネガティブな意見も目立ちます。
「嫁」の語源には息子の妻として迎えるから呼女(よびめ)、姑に対して立場が弱いから弱女(よはめ)、夜の殿に仕える若い女で夜女(よめ)といったあまり良い感じがしない諸説があります。
さらに女偏に家という漢字構成にも「女は家のこと(家事)をしろ」という暗示を与えかねないとして問題視する人もいます。
「嫁」を気に入って使っているのに、他人からネガティブな意見をぶつけられたら嫌な気持ちになっちゃいますよね。
ここからは私見になりますが・・・言語は流動性を持った概念だと思っています。時代に即した意味や読みの変化が生じるのはごく自然なことです。
それを新しい日本語として受け入れるか、誤用として拒絶するかは自分が属しているコミュニティ(社会全体、地域、勤め先、友人、家族など)の中で合意形成されるものです。
コミュニティの判断が気に入らなければ、合意が得られそうな別のコミュニティに移ればいいだけの話。
「誤用だ!」と主張するのは自由ですが他人に強要したり扇動するのはちょっと違うよねーと思う次第です。
だから押しつけがましい人をみかけても、あなたが気に病む必要はありませんよ。呼ぶ側と呼ばれる側の合意がとれてるならそれでいいじゃないですか。
呼び方の意味を変える
余談になりますが、当サイトのタイトルは「嫁にモテたい」です。単純なタイトルですが当時は結構悩みました。
「妻」や「家内」だと堅苦しいイメージがあって「モテたい」という下世話なテーマに合わないし、「かみさん」や「奥さん」、「パートナー」は冗長でタイトルとして締まらない。
- 妻にモテたい
- 家内にモテたい
- かみさんにモテたい
- 奥さんにモテたい
- パートナーにモテたい
なんか変でしょう?(笑)
「嫁」は「モテたい」の俗っぽい感じにしっくりきました。「〇〇は俺の嫁」というネットスラングと同じニュアンスです。
また、前述の「嫁」に対するネガティブな意見へのアンチテーゼとして「皆悪く言うけど俺は好きだぜ」という呼び方に対する想いを「モテたい」で表現しています。
嫁に上奏してOKが出たのでサイトタイトルが「嫁にモテたい」に決定しました。
結婚前の純粋な恋愛の情熱を宿しつつ、配偶者としての敬意と慈愛を大切にするために「嫁」の意味を再定義してみました。
よめ [嫁]
(1) 夫の心を強烈に惹きつける妻
(2) 夫がポジティブな体験や満足を得られるような感情・行動・態度を有する妻
(3) 好循環の未来を創造する夫婦の片方引用:「嫁」 『嫁にモテたい』より。
ぼくにとっての「嫁」はこんな感じ、という余談でした。
まとめ
妻・嫁・女房・奥さん・家内・かみさん etc.
自分の配偶者のことを他人に話す時、どんな呼び方を使いますか?この記事での選定ポイントを以下にまとめたので参考にしてみてくださいね。
- 迷ったら「妻」
- 状況別に使い分ける
- 呼ばれる側(あなたの配偶者)に好感を与える呼び方
- 日本語の意味や語源は気にし過ぎない
一番大切なのは言葉の意味よりも言葉に込めるあなたの想いですよ!